移住サポーターガイドツアー
参加者の声
三重県出身・石井さんの
大熊町移住と起業ストーリー

三重県出身の石井さんは、大学院での課外カリキュラムや研究を通じて福島県大熊町に関心を持ち、2023年に移住しました。2024年には廃材を活用したオーダーメイド家具の製作事業を起業。復興が進む大熊町のビジネスと交流の中心である「大熊インキュベーションセンター」で、石井さんの暮らしについてお話を伺いました。

「移住しちゃおう」という気持ちから
大学卒業後に大熊町へ移住

大学院生時代に福島県浜通りをたびたび訪れていた石井美優さん。大学が大熊町の復興と関わっていたこともあり、「震災直後と10年後の町の変化」をテーマに卒論を執筆。研究で大熊町を訪れるうちに移住を意識するようになりました。

「軽いノリで『大熊町に移住しちゃおうかな?』と話していたら、町の人に『それなら本当に移住してほしい』と言われて、話が進んでいきました。」と振り返ります。家族の心配もありましたが、大学院卒業後の2023年7月に大熊町に移住しました。

移住当初は町民も少なく、出会う人と自然に顔見知りになることができ、移住者に対してもオープンで過ごしやすい雰囲気だったそうです。町の人々に対する印象を石井さんにたずねると、「同年代の人たちに刺激を受けることが多いですね。『この町に住む』ことに対して、それぞれが目的や考えを持っていて、漠然と生活している人が少ない印象です」と語ってくれました。

復興がスピードアップ ―
変わり続ける大熊町で暮らして

石井さんが町に移住してからの1年半は、まさに復興が加速した時期。JR大野駅西口の産業交流施設「CREVAおおくま」や商業施設「クマSUNテラス」、認定こども園と義務教育学校の子どもがともに学ぶ教育施設「学び舎ゆめの森」の整備が進められ、生活環境が少しずつ整いつつある中で、移住や帰還をする人も増えてきています。

「私が移住した当初の大熊町とはまったく違う町ができています。そのスピード感もすごく早い。大きく変化する環境に、体がついていかないときもあります。」と戸惑いも感じている石井さん。

そんな石井さんを支えてくれるのは友人たちです。「情報量が多くなっている中で、町のことや難しい問題も話し合える人がいるのは心強い。」と本音をつぶやきます。

移住後のお仕事について ―
廃材を活かしたオーダーメイド家具の製作事業を起業

移住後、石井さんは浪江町の設計事務所でアルバイトするかたわらイベントの企画やチラシ制作、新しくオープンする店舗のパンフレットなど、グラフィックデザインを中心とした仕事に携わりました。人からの紹介でお仕事につながることが多かったそうです。

2024年10月には「福島県12市町村起業支援金」の採択を受け、オーダーメイド家具製作の事業を立ち上げ、新たなキャリアをスタートさせました。大熊町で解体した建物から廃材や壊れた家具を回収し、新しい家具へ再生させることをコンセプトとして、デザインから制作まで石井さんが手作業で行います。

「開業にかかる初期費用が補助されるので起業支援金に応募しました。もともと趣味で家具作りをする程度だったので、まずは身近な人から依頼を受けて家具を作って、実際に使ってもらいたい。」と語ります。「ここでいろいろ学びながら、自分でも何かできるスキルとかを身につけられるようになりたいと思っています。」と目標を抱く石井さん。建築士の資格取得も考えているとのことで、今後の活躍が楽しみです。

移住後のつながりを得られた「ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー」

石井さんは、2022年開催の「ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー」に参加。「大学の課外プロジェクトで何度か大熊町を訪れた際、移住サポーターの方にツアーを紹介されたのがきっかけでした。交通費と宿泊費の補助があるのも助かりました。」と話します。特に印象に残ったのは農業体験とKUMA・PREでの販売体験で、まちの暮らしを深く体験できたそうです。

少人数ツアーだからこそできる、住民をはじめ、様々な方々と直接交流することで、移住後も続くつながりも生まれました。「震災からの復興やまちづくりの研究で訪れる大学生にも、ツアーを活用してほしい」と石井さんならではの体験談を聞くことができました。


◆おわりに◆
令和7年度も「ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー」の開催が予定されています。復興に向けて変化を続ける「ふくしまのいま」を感じることができます。ぜひ参加してみてください。

場所:大熊インキュベーションセンター
日時:2025年2月20日(木)
取材:藤原カズヒロ